最初の問いは「EORはどこか」ではなく「誰が指揮命令するか」
日本市場に入る海外企業は、ほぼ例外なく「EOR(Employer of Record)を探している」という言い方から相談を始めます。便利な略語ではありますが、日本法にはそのまま対応しません。日本に「EOR」という許可区分は存在せず、法令もその語を使っていません。日本法が規律しているのは関係そのもの、すなわち役務の提供を受ける会社が、その人に指揮命令もしているかどうかです。この一点が決まれば、適法な形態、供給者に必要な許可、そして間違えたときに誰が責任を負うかが自動的に決まります。
適法な形態は三つ、判定基準は一つ
- 有料職業紹介 —— 紹介会社が候補者を紹介し、貴社が直接雇用します。指揮命令も雇用も貴社。紹介会社には有料職業紹介事業許可が必要です。
- 労働者派遣 —— 雇用主は派遣元、日々の指揮命令は貴社。日本で「EOR」と呼ばれているものの多くは、法的にはこれです。派遣元には労働者派遣事業許可が必要です。
- 業務委託・請負 —— 雇用も指揮命令も受託者側にあり、受託者は定められた成果物に責任を負います。派遣許可は不要ですが、それは受託者が実際に指揮命令している場合に限られます。
分かれ目は指揮命令です。契約書のタイトルでも、請求書の文言でも、その人がどこに座っているかでもありません。貴社の管理職がその日の作業を割り当て、成果物を承認し、勤務時間を決め、評価のフィードバックを行っているなら、書面に何と書いてあっても労働者派遣です。
第40条の6 —— これは発注者側のリスクである
2015年10月1日以降、労働者派遣法には労働契約申込みみなし制度が置かれています。派遣先が五つの違法派遣のいずれかに該当する形で労働者を受け入れた場合、その派遣先は、当該労働者が派遣元との間で有していた労働条件と同一の内容で、労働契約の申込みをしたものとみなされます。みなされた申込みは1年間撤回できず、その期間内に労働者が承諾すれば、派遣先との間に労働契約が成立します。結果が着地する先に注意してください。供給した事業者だけでなく、受け入れた会社です。
- 派遣が禁止されている業務(港湾運送、建設、警備、一部の医療関連業務)に派遣労働者を従事させた場合
- 労働者派遣事業の許可を受けていない事業主から労働者派遣の役務の提供を受けた場合
- 事業所単位の期間制限に違反して受け入れた場合
- 個人単位の期間制限に違反して受け入れた場合
- いわゆる偽装請負等 —— 派遣法の適用を免れる目的で請負等の名目としながら、実態として自ら指揮命令していた場合
例外はあります。違法派遣に該当することを知らず、かつ知らなかったことに過失がなかった場合には適用されません。ただし実務上、この例外は見た目ほど広くありません。許可番号を求めたこともなく、確認したこともなく、指揮命令の分界を契約に書いてもいなかった発注者が「過失はなかった」と主張するのは容易ではないからです。
供給者の確認は5分で終わる
- 番号そのものを求めてください。労働者派遣事業許可は 派13-318670 のような形式、有料職業紹介事業許可は 13-ユ-317654 のような形式です。書面で出せない供給者は、それ自体が答えになっています。
- 厚生労働省の人材サービス総合サイト(jinzai.hellowork.mhlw.go.jp)で、許可事業者として掲載されているかを照合します。
- 許可を保有している法人名が、実際に契約を締結する法人と一致しているかを確認します。グループ会社は互換ではありません。
- 紹介予定派遣を使うなら、両方の許可を保有しているかを確認します。片方では足りません。派遣と職業紹介の組み合わせだからです。
- 誰が指揮命令するかを契約に明記します。業務委託で買うのであれば、受託者が自社の要員に指示を出す体制でなければならず、契約と現場の実態が一致している必要があります。
見落とされがちな期間制限
3年の時計が二つ、同時に走っています。事業所単位では、派遣先の同一事業所が派遣労働者を受け入れられるのは3年までで、延長するには期限前に過半数労働組合または労働者の過半数代表者への意見聴取が必要です。個人単位では、同一の派遣労働者を同一の組織単位(通常は課)で受け入れられるのは3年までです。いずれかを超えれば第40条の6 の五類型のひとつに当たるため、これは脚注ではなくカレンダー上の管理項目です。
雇用主が実際に回さなければならないもの
供給者が雇用主になるとき、その役割には具体的な義務が付いてきます。単価を提示してくる供給者には、以下がすべて含まれているかを確認してください。日本ではいずれも任意ではありません。
- 雇用契約の締結と、労働条件通知書の交付
- 毎月の給与計算、所得税・住民税の源泉徴収、年末調整
- 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続と保険料の納付
- 労働保険(労災保険・雇用保険)の加入と申告納付
- 就業規則の整備、労働時間の把握、時間外労働をさせる前の36協定の締結と労働基準監督署への届出
- 派遣労働者の同一労働同一賃金対応(労使協定方式または派遣先均等・均衡方式)と本人への説明
- 法定の年次有給休暇の付与、および離職票を含む退職時手続
- 外国籍人材については、当該業務を実際に行える在留資格の確認
雇用コストは給与額ではない
健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、子ども・子育て拠出金を合わせると、会社負担はおおむね月額報酬の15〜16%程度になります。正確な数値は年度、都道府県、業種別料率によって動くため、提示された単一の比率は定数ではなく確認すべき見積りとして扱ってください。ここを明示的に予算化しておくかどうかが、財務の査定に耐える採用計画とそうでない計画の差になります。
調達部門向けの短いチェックリスト
- いま買おうとしているのはどの形態か —— 職業紹介、労働者派遣、紹介予定派遣、業務委託のいずれか
- 供給者はその形態に必要な許可を保有しているか。番号を実際に確認したか
- 契約書上の法人と、許可を保有している法人は一致しているか
- 日々の指揮命令を行うのは誰か。それは契約に書かれているか
- 3年の期間制限は管理されているか。その期日は誰が持っているか
- 提示単価に法定福利費は含まれているか、それとも別途か
- 外国籍人材の在留資格は誰が、オファーの前後どちらで確認するか
TACの位置づけ
Tech Alliance株式会社は日本の二つの許可を保有しています。労働者派遣事業許可 派13-318670 と、有料職業紹介事業許可 13-ユ-317654 です。両方を保有していることが、一社で適法に紹介予定派遣を提供できる条件であり、同時に「自社が持っている許可に合わせた形態」ではなく「業務に合った形態」を提案できる理由でもあります。日本国内で行う業務の契約と請求は日本法人が日本円で行い、契約主体を日本国外に置く必要がある場合は、シンガポール・香港・中国のグループ法人で対応します。
本記事は日本で人材を確保する際の一般的な情報提供であり、個別案件に対する法律上の助言ではありません。ある形態が適法かどうかは、実際の業務内容と運用の実態によって判断されます。案件ごとに弁護士または社会保険労務士の確認を受けてください。